成長する死体

■ひとつの意見
あなたの子供は、触れば温かくて、髪や爪も伸び、
身長も伸び、体重も増えていますが、
でも死んでいます。


■上記を肯定する意見
臓器移植法A案が可決され、衆議院を通過した。
脳死を原則として死と認定し、
親が許可すれば本人の同意なく、15歳以下でも臓器を提供することができるようになった。


■私の意見
最近は、人間は大脳が死んでも生きていける。
私は脳という臓器以外にも心はあると信じている。
例えば、胃や腸や子宮、卵巣、精巣、心臓なんかに。
胃腸が悪いと精神的にも落ち込むし、
ホルモンを出す臓器はそのまま心を引っ張っているっていう気がする。
医学的な根拠は置いといて、
例えば去勢した雄犬は大人しいというように、
性格が変わるのだったらそこに心があったんだと考えてもいいと思う。

しかしそれでも人間を本当に人間たらしめているのは大脳だと思う。
例え間脳が生き残っていたとしても、
肉体が成長し続けていたとしても、
大脳が死んでいるのならばそれはもう肉も同然だ。
例えるならば、試験管の中で培養している細胞と同等の存在だ。
細胞は肉屋の肉とは違って生きているが、しかし個人として存在しているわけではない。


■反対意見
今日TVで見た脳死状態だと言われた子供を持つ親は、
この子はこういう生き方をしているんだと言って、
夜は2時間置きに起きて世話をして、それを受け入れていた。


■私の主観
しかし私が見たその子供の顔は
インカ帝国の子供のミイラの顔とそっくりに見えたし
うちの祖父母の死体の顔を思い起こさせる顔をしていて、
正直、生きている顔には見えなかった。

これはTVを通して見た、純粋に表情だけの話で、
世話をしている親はやはり温かさとか、のどから出る音とか
何らかの反応を見ることによって、やはり生きている事を実感しているのだろう。


■特に受け入れがたい事について
子供の脳死で辛いのは、
大人であるならば生かしておいても衰えるだけなのが、
子供だと成長していくという点、これが一番辛い事なのかもしれない。
親にとって、成長している我が子が死んでいるなんて、
到底受け入れがたい事であるだろう。


人間は生き方も死に方も複雑なものになってしまった。
だが死はどのような形であれ辛く受け入れがたい。

(が、死が安らぎの豊潤な香りを漂わせている事も事実だ。
  しかしそれはまた別の話。)
(ではあるが私が死を受け入れ肯定する理由でもある)


■法に対する意見
選択する機会が与えられ、助かる命が出てくるかもしれないと言う事は重要な事だ。嫌なら断るという選択肢も残されているし。